AOCシェーブル特集 研究科第5回 前篇

夏はシェーブル(山羊乳チーズ)が旬です。

えっ、チーズに旬なんてあったの?と言われそうですが、

四季の移り変わりにより、その季節を代表するチーズがあるんですよ。

山羊は1月から春まで出産のシーズンを迎えます。
ミルクは本来は赤ちゃんのものなのですが、人間がそれを横取りして(表現が悪くてすみません)シェーブルを作ります。

お母さん山羊がおっぱいを出す春から秋にかけてがシェーブルの旬です。

でも、現在では
出産調整をしたり冷凍乳を使って1年中作られているものが多く旬の感覚が薄れているのはどの食材にもいえることですね。

フランスAOCシェーブルは
冷凍乳の使用を禁止しているものが多く本来の旬を味わうことができます。

シェーブルの特徴は

1. 乳量が牛の10分の1

牛乳と山羊乳では搾乳量が大きく違います。
牛は1頭当たり1日に20~40? それに対して山羊は最大でもたった2? 少ない乳量で作るためコストがかかります。
牛乳製に比べ割高感があるのはそのためです。
シェーブルは希少なチーズなんですよ。

2. ゴーティーフレーバー(山羊臭)

シェーブルの味わいの最大の特徴はゴーティーフレーバーにあります。
獣臭とか牧場の藁の臭いとかいろいろ表現はありますがシェーブルの嫌いな人はこの臭いが受け入れ難いのだと思います。

でも、人間って不思議なもので臭いものに惹かれるものなんです。
最初は嫌いだったこの臭いも慣れてくるとだんだんよくなってやみつきになってしまいます。

私がチーズ&ワインアカデミー東京でチーズを学んでいた頃、最初はシェーブルが苦手でした。
ある時、10種類以上のシェーブルだけが登場した講義があって、もう、その時は倒れそうになりましたよ。

この香りは脂肪が分解されて脂肪酸になりさらに分解されてできる遊離脂肪酸(カプロン酸やカプリン酸)に由来します。
ちなみに、泡盛の古酒にもこのカプロン酸やカプリン酸があり、泡盛に造詣の深かった琉球王家の尚順男爵の「鷺泉随筆」に優良な古酒の香りとして「オスの山羊の香り」を挙げています。
だから、シェーブルと泡盛はベストマリアージュ!!

3. 爽やかな酸味

シェーブルの味わいのもう一つの特徴がこれ。
山羊乳は牛乳と違ってレンネット(凝乳酵素)が効きにくいたんぱく質の構造になっており、乳酸発酵主体のため、
酸味がありテクスチャーが柔らかく独特のキメを作り出しています。

沖縄生まれで沖縄育ちの私ですが、沖縄が誇る山羊汁が苦手です。(ごめんなさい)
でも、シェーブルは大好き!何故なら、あの爽やかな酸味とナッツのようなコクが楽しめるから。
これって、山羊汁にはない味わいですよね。

4. バラエティ豊か

シェーブルは乳量が少ないので大型のチーズは作れません。
小型、もしくは手のひらサイズの可愛いものが一般的です。
形も様々で、丸太、ピラミッド、樽栓形、灰まぶし、ハーブをまとったもの、栗の葉包み、フレッシュタイプから熟成したものなどなど。
若いシェーブルはヨーグルトのような酸味があり、熟成したものは酸味が穏やかになりナッツのようなコクと一体になって素晴らしいバランスを作り出します。

5. ダイエット効果

食品業界では
「ダイエット効果がありますよ」と言わなければ売れ筋にならないという風潮があります。

チーズを食べたら痩せるとか美容によいとか、そんな風にチーズを宣伝したくはないです。
おいしいから食べてほしい!

でも、実際には
マイナスイメージのチーズを正しくお伝えするためにこれも言わなければ。

山羊乳は牛乳に比べて
脂肪球や蛋白質のカゼインミセルが極小なため消化吸収に優れています。

人乳に近いため
おっぱいの出ないお母さんの代替乳としても利用されます。

ここで、ちょっと脱線
終戦後、極端に栄養状態が悪かった沖縄の子供たちを救おうとアメリカのボランティア団体から山羊が贈られました。
山羊乳が人間の母乳に近いと知っていたのですね。
でも、
哀れ、その山羊たちは子供たちにミルクを供給することなく大人の胃袋に収まってしまった。
その山羊の末裔は 1頭も残っていないそうです。
ヒージャージョーグー(山羊好き)のウチナーンチュならではのエピソードです。

ダイエット効果で最近注目を集めている
中鎖脂肪酸は植物油に多く含まれています。
中鎖脂肪酸はすばやく分解されエネルギーに変換されるため体脂肪になりにくいといわれています。
山羊乳には中鎖脂肪酸が200㏄中2g存在しますのでダイエット効果が期待できるということです。

ここまで読んでくださってありがとうございます。
続きはまたあとで。

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